「体のサビ」を防ぐ抗酸化作用:酸化ストレスと食生活の深い関係

HEALTH

酸化ストレスは「体のサビ」とも呼ばれ、私たちの細胞やDNAを傷つけ、老化や病気のリスクを高める原因として知られています。この現象に対抗する鍵が、抗酸化物質にあります。抗酸化の作用を測る指標である「酸素ラジカル吸収能力(ORAC)」についての知見や抗酸化食品のリストを交えながら、酸化ストレス対策を深掘りしていきます。

酸化ストレスとは?その原因と現代社会のリスク

酸化ストレスは、活性酸素(フリーラジカル)が体内で増加し、抗酸化防御機能が追いつかなくなる状態です。この活性酸素は細胞膜やDNAを傷つけ、老化やがん、心疾患、糖尿病などの疾患に関わることが分かっています。
酸化ストレスは、体内で発生する活性酸素が抗酸化防御システムを上回る状態で発生します。この状態を引き起こす原因は、私たちの生活の中に多く潜んでいます。

1. 喫煙

喫煙は酸化ストレスを引き起こす主要な要因の一つです。タバコの煙には、多くの有害な化学物質が含まれており、これらが体内で活性酸素を生成します。非喫煙者に比べ、喫煙者の間でがんや心血管疾患のリスクが高いのは、この酸化ストレスが大きく関係しているからです。

2. 激しい運動

適度な運動は健康に良いとされていますが、過度の運動は酸化ストレスを引き起こします。激しい運動を行うと、酸素消費量が増加し、その結果として体内での活性酸素の生成が促進されます。特にアスリートやトレーニングを重ねる人々は、抗酸化物質の補給が重要です。

3. 焦げた食品

バーベキューや焼き魚の焦げた部分には、発がん性物質として知られる「ヘテロサイクリックアミン(HCA)」が含まれています。これらの物質は酸化ストレスを引き起こし、細胞にダメージを与える可能性があります。健康のためには焦げた部分を避けるのが賢明です。

4. 環境汚染と紫外線

空気中の汚染物質や紫外線も酸化ストレスを引き起こします。特に都市部では、排気ガスや工業排水に含まれる化学物質が酸化ストレスのリスクを高めます。また、紫外線は肌の酸化ダメージを引き起こし、シミやシワの原因となります。

ORACとは?抗酸化作用を測る指標

ORAC(酸素ラジカル吸収能)は、食品が持つ抗酸化能力を測定する指標として広く用いられていたものです。具体的には、食品中の抗酸化物質がフリーラジカル(活性酸素)をどれだけ中和できるかを数値化したものです。この数値が高ければ高いほど、その食品の抗酸化力が強いとされていました。

ただし、ORACの指標は、試験管内での評価(in vitro)に基づいており、食品を摂取した後に体内でどのように作用するかを示すものではありません。そのため、2012年にアメリカ農務省(USDA)は、この数値が体内での健康効果を直接反映しているとは言い切れないとして、ORACデータの公表を終了しました。

ORACが評価された食品例

以下は、ORACスコアが高い食品の例としてリストアップされていたものです。(100gあたりの数値)
これらの食品にはポリフェノールやビタミンCなど、抗酸化物質が多く含まれています。

食品数量ORAC、トロロックス当量(µmol/100g)
プルーン1カップ14,582
小豆1/2カップの乾燥豆13,727
ワイルドブルーベリー1カップ13,427
赤インゲン1/2カップの乾燥豆13,259
ピントビーン1/2カップ11,864
クランベリー1カップ生9,584
ブルーベリー1カップ生9,019
アーティチョーク1カップ、調理済み7,904
生のココア豆1オンス7,840
ブラックベリー1カップ生7,701
ラズベリー1カップ6,058
イチゴ1カップ5,938
赤リンゴリンゴ1個5,900
グラニースミスアップルリンゴ1個5,381
ペカン1オンス5,095
スウィートチェリー1カップ4,873
ブラックプラムプラム1個4,844
ラセットポテト1個、調理済み4,649
チョークベリー1オンス4,497
黒豆1/2カップの乾燥豆4,181
梅1個4,118
ガラ・リンゴリンゴ1個3,903
ザクロ100グラム2,860

出典 ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典
https://ja.wikipedia.org/wiki/酸素ラジカル吸収能
最終更新 2023年3月12日 (日) 09:14 

ORAC値の公開が取りやめられた理由

体内での効果が未証明:食品に含まれる抗酸化物質は消化・代謝過程で変化し、多くが体外に排出されます。

特定のラジカルのみを測定:ORAC値は、主にペルオキシラジカルに対する作用を測定しており、他の種類の活性酸素への効果は反映されていません。

日常生活で抗酸化物質を取り入れる方法

ORAC値が直接の健康効果を示さないとしても、抗酸化物質を多く含む食品をバランスよく摂取することは、酸化ストレスを軽減するための一つの手段です。抗酸化物質は、体内でのフリーラジカルを中和し、細胞の酸化ダメージを防ぐ役割を果たします。以下は代表的な抗酸化物質とそれを含む食品です。

1. ビタミンC

  • 食品例:オレンジ、グレープフルーツ、ブロッコリー、トマト
  • 効果:免疫力向上、コラーゲン生成促進

2. ビタミンE

  • 食品例:アーモンド、ヒマワリの種、オリーブオイル
  • 効果:細胞膜の保護、血行促進

3. ポリフェノール

  • 食品例:緑茶、ブルーベリー、赤ワイン
  • 効果:抗炎症作用、心血管疾患予防

4. カロテノイド(リコピン、ルテイン)

  • 食品例:トマト、ほうれん草、にんじん
  • 効果:目の健康維持、紫外線ダメージ軽減

美容と健康に抗酸化物質を活用

抗酸化物質は、単に老化を遅らせるだけでなく、美容や健康全般に多くのメリットをもたらします。特に以下のような効果が期待されています。

  1. 肌の健康維持:紫外線や酸化ストレスによるダメージを軽減し、若々しい肌を保つ。
  2. 免疫力の向上:体内のバランスを整え、病気にかかりにくい体質を作る。
  3. 慢性疾患リスクの低減:動脈硬化やがんなどのリスクを軽減する可能性。

日常生活でできる酸化ストレス対策

抗酸化食品を日常的に取り入れることに加え、生活習慣を見直すことで酸化ストレスを抑えることが可能です。

1. 食生活の改善

  • 新鮮な野菜や果物を摂取:抗酸化物質を効率よく取り入れるため、毎日の食事に色とりどりの食品を取り入れましょう。
  • 調理法の工夫:野菜は蒸すことで抗酸化物質を多く保持できます。生野菜や果物は、そのまま摂取することでビタミンCなどの損失を防げます。

2. 健康的な生活習慣

  • 禁煙:喫煙を控えることで、活性酸素の発生を抑えられます。
  • 適度な運動:ウォーキングやヨガなどの適度な運動で、抗酸化酵素を活性化します。

3. 環境への配慮

  • 紫外線対策:日焼け止めや帽子で紫外線ダメージを防ぎます。
  • 汚染物質の回避:空気清浄機やマスクを活用して大気汚染から身を守ります。

科学が示す抗酸化の未来:活性酸素とどう向き合うか

近年の研究では、抗酸化物質が酸化ストレスを軽減するだけでなく、心血管疾患やがんのリスクを減らす可能性が示されています。ただし、これらの効果は食品全体をバランスよく摂取することが重要であり、あまりに過剰な摂取は逆効果になる場合があります。

まとめ:「体のサビ」を防ぐ食と生活の見直し

酸化ストレスに打ち勝つためには、抗酸化食品を積極的に取り入れ、健康的な生活習慣を維持することが大切です。「体のサビ」を防ぐために、今日からできることを一つずつ実践し、若々しい体と心を保ちましょう。

あなたの次の一歩は?
新鮮なブルーベリーを使ったスムージーや、緑茶を一日一杯飲むことから始めてみてはいかがでしょうか?